「cafeあずま」からみえること
吉田妙子(cafeあずま)

空き店舗を地域交流スペースに

 2021年のお盆明け、上京区で4代にわたって米穀店を営んでこられた方から、引っ越すにあたってご自宅兼店舗を「地域の役に立てたい」というお話がもちこまれました。米穀店と親交のあったUさん、介護事業所を経営しているSさん、地域で新婦人の活動をしている私で話し合い、北野商店街の一角に、地域交流スペース「cafeあずま」を立ちあげることになりました。「あずま」というのは米穀店のお名前です。そして1階(土間、台所、洋間)を貸しスペースに(利用料は午前、午後、夜間で1枠500円)、2階(洋間3室)は主に事務所スペースとして貸すことにしました。

 規約の「目的」には、①地域のさまざまなグループや団体の自主的な活動を応援 ②生き辛さをかかえて困難に陥っている人たちの居場所づくりの2つを掲げ、「つながる・ひろがる・ささえあう」をスペースの合言葉にしました。

 ちょうど社会福祉会館、西陣文化センターなど、上京区民が利用してきた施設が相次いで閉鎖され、コロナで区役所の会議室も貸してもらえず、みんなが困っていたときでした。また、Sさんがとりくんでいる、引きこもりなど「脱・孤立プロジェクト(※休眠預金等活用法に基づく国庫補助事業)」の受け皿を検討し始めていたときでした。

コロナ禍だからこそ、つながりたい

 2020年10月3日、オープンするやいなや、さまざまな問い合わせがありました。レコードを聴く会、ヨガ・英語・ピアノ教室、町内会の集まり、絵手紙展、骨董市など、まさしく想定外の需要です。そして一番驚いたのが、「私に何かできませんか?」というボランティアの申し出でした。「コロナでまったくご近所とも顔を合わせない」「家にこもっていると気分が滅入ってしまう」…口々におっしゃるのです。コロナの感染拡大のなか、つながりを求める人がこんなにもおられることにビックリする毎日でした。

 さっそく週2日のカフェをオープン(10:30~12:30コーヒーなど100円で提供)、年末には、子どもを対象にした「クリスマス会」や「みんなで年越し・たすけあい市」を企画し、食材の無償提供や衣料、生活用品の格安バザーをしました。

 京都新聞の特集記事やKBS京都のテレビ番組「おはよう輝き世代」に取り上げてもらうと、すぐに「新聞を見たから」「テレビを見たから」と、問い合わせの電話が入ってきました。

春休み・GW限定の「子ども食堂」で新たな展開

 春休みには、11日間、子ども食堂をひらきました。毎日カフェをオープンし(10:00~15:00)、子どもたちの勉強をみたり、いっしょに遊んだり、お昼のお弁当を食べたり(商店街から調達)…。教員を志している佛教大の学生さんにアルバイトのシフトを組んでもらいました。学生スタッフのみなさんのスキルと魅力で日を追うごとに子どもの数は増え、毎日15人以上の子どもたちが出たり入ったりしました。一人親家庭のお子さんも何人か来られ、親御さんからは「ほんとうにありがたい」「夏休みなどもして欲しい」と要望の声が寄せられ、手ごたえを感じました。

 3度目の緊急事態宣言が出された4月には、こんなときだからこそ居場所が必要な子どもたちがいるとゴールデンウィークに6日間、子ども食堂を開設しました(10:00~16:00)。スタッフのために唾液抗原検査キットも用意し、万全のコロナ対策をしながらの毎日でしたが、それは、コロナで帰省できず、アルバイトも減った学生さんたちの居場所にもなりました。

「cafeあずま」からみえること

 オープンして7か月、月曜から土曜の午前中に開いているカフェや貸会場も定着してきました。子ども食堂の開設で、これまでどちらかというと高齢者を中心にしてきたカフェのイメージがまた変わりつつあります。

 「cafeあずま」の強みは、地域・ボランティア・介護事業所がタッグを組んでいること、そして寄付金のほかに、いろんな助成金を申請して得た活動資金があることです。介護の専門職集団がいることで、高齢の方や障がいのある方の相談・対応ができますし、地域にネットワークがあることで、情報やいろんな協力が得られます。そして、潤沢な資金が大胆な事業展開を可能にしています。

 格差の拡大とコロナ禍で、先が見えない、「自助」ではもう限界という人があまりにも増えています。「cafeあずま」に来る高齢者や子どもたちを通して家庭や地域のさまざまな課題が見えてきました。「共助」の必要性は感じるものの、それは本来、「公助」=行政がすべきことではないかという思いも強くなりました。これからも「cafeあずま」の活動を通じて、地域の「共助」の輪をひろげ、「公助」を動かす力になればと思っています。